2012年10月9日火曜日

タラコスパ1974


ご存知の方もいらっしゃると思いますが、先週の5日に偉大なる「タラコスパ」の発案者である成松孝安氏がお亡くなりになられました。謹んでお悔やみを申し上げます。

当店でも人気の「タラコスパ」は成松氏のレシピ通り、「タラコ、バター、昆布茶、塩、胡椒、レモン、海苔」のみで構成されたシンプルなものです。
こんなにシンプルな材料で誰でも簡単に作れてとても美味くて、かつ飽きない。
こんな素晴らしいレシピってそうそうありません。
僕が死ぬ前に一食だけスパゲティが与えられるなら迷わず「タラコスパ」をオーダーするでしょう。
未来永劫に残されてゆくべき料理のひとつだと思います。

僕が初めてスパゲティを食べたのはかれこれ40年近くも前のことです。
それは家の近所にある洒落たオバサン(オネエサン?)がやっていた喫茶店での事でした。
保育園に迎えに来てくれた母親が帰り道にあるその店にたまぁに寄るわけです。
今考えれば夕飯を作るのが面倒だったのでしょう。
その店は当時モダンだった茶色いレンガ造りのアパートの1階にありました。
ドアを開けると仄かな明かりと珈琲の香りに包まれます。
僕は大人の社交場のようなそのお店に行くのが大好きでした。

そこで初めて食べたのが「タラコスパ」でした。
それは衝撃の味で僕を魅了し虜にさせました。
ご飯で食べるタラコ飯の味と触感も香りも違う、同じタラコなのに何がこんなに違うのか?
子供心に考えさせられたものです。
当時、和風スパとして一世を風靡した<壁の穴>や<ハシヤ>が出たての頃。
いつもお洒落な格好をしたオーナーの女性はいち早く、その時代の最先端だったメニューを取り入れたのでしょう。
僕はその強烈な味とその店とお洒落なオーナーの雰囲気も含め、それ以来スパゲティが大好きになったのです。

僕の思う「タラコスパ」は上質のタラコと上質のバターと上質のパスタがあればそれでいいんです。
チューブから押し出されたショッキングピンクのタラコとマーガリンと冷凍パスタではいけないのです。
その上に本物のキャビアが乗っていたとしてもそれは僕の食べる物ではありませんし、お店でお出しする物でもありません。
僕は店の賄いで数え切れないほど「タラコスパ」を食べてきましたが、その度パブロフの猛犬のように思い出します。言わば僕のスパゲティ、いや料理の原点でもあるあの味の衝撃とお店の雰囲気を。

そこでこの偉大なる「タラコスパ」の発案者、成松孝安氏を多くの人と偲びたいと思います。
オリエントスパゲティでは10/10〜12日までの3日間、このブログを読んでくれた方に限りメニューに載っているタラコ、明太子と名の付くメニューを半額とさせて頂きます。
スタッフに「タラコブログ見た」とお伝え下さい。
皆で味わいましょう。

最後に。
成松さん、これからもしっかり上質な食材で味を守ってゆきます。偉大なレシピをありがとうございました。ゆっくりお休み下さいませ。

オリエントスパゲティ 佐藤

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