2010年2月25日木曜日

冷たいパスタ

もうすぐ夏ですね。夏になると食べたくなるのが冷たい麺類。暑くて食欲の無い時でもツルリと食べられる。そうめん、ひやむぎ、つけ麺、ざる蕎麦、韓国冷麺、そして冷製パスタ。僕は夏には必ずどれかは食べています。せっかくなので簡単冷製パスタを紹介します。一言で言えばトマトのマリネであえるだけです。簡単で超有名ですが材料をグレードアップすればお店の味にも負けません。

自宅バージョン
1、ざく切りしたトマトを器に入れオリーブオイル、ビネガー、塩、胡椒して冷蔵庫に放置しておく。
2、しばらくすると浸透圧でトマトから水分が出てきて勝手になじむ。
3、冷たいパスタであえる。

めちゃめちゃ簡単。余ったらワインのつまみにするなり、パンに塗るなり、ドレッシングにするなり、きゅうりとかセロリを少し足してミキサーで回してガスパチョ風スープにするなり、バンバンジー風に割いたササミなんかにかけてもいいかもしれませんね。あとは好きに思いつくままお楽しみ下さい。

お店バージョンでさらにグレードアップをしたい方は。
1、最高級希少トマトを湯剥きして種を取ったりしてみる。
2、マリネする時に、一晩水にさらして辛味を取った紫玉ねぎのミジン切りや、刻んだオリーブ、フレッシュバジル、なんかを入れて風味を付けたりしてみる。
2、各調味料をお金が続く限りグレードアップさせていく。
3、ビネガーを2,3種類ブレンデッドしてみたり、レモン汁、たまにはバルサミコ酢なんかでアクセントを付けてみる。
4、高級カッペリーニを確実に冷たく、かつアルデンテに仕上げ、素早くソースとあえる。
5、冷やした高級皿に割ったにんにくをこすり、軽く香りだけ移してみる。
6、気前よく盛り付けたら、最高級エキストラヴァージンオイルを気持ち悪くならない程度、適に振り掛ける。
7、乾いた風の吹く夏の昼下がり、庭で糊の利いたクロスをテーブルに広げシルバーをセットし、冷えた最高級白ワインを用意する。
8、友人を招き一人2625円頂く。
9、友人なので大盛、W盛りは無料とする。

オリエントでも続々と冷製パスタ始まっています。次回は「冷やしたらこ」秘話をお届けいたします!

2007年05月30日

まだのよう

クリスマスシーズンもやっと一息の今日、初めて僕のやりたかったオーダーでお食事をされたお客様がいらっしゃいました。
それは常連のおばあちゃんで、どうしてもうちのトムヤンクンスープが飲みたくなったと寒い夜にご来店されたのですが、
そのオーダーはスープと牛肉の赤ワイン煮とパンというもの。(しめて¥930でパスタ1皿とかわらない!)
そう!これこそが僕のやりたかった裏オーダーなのです。
もちろんパスタメインの店なので、みんながみんなこれになってしまうのも考え物ですが、
こんなオーダーでも立派なお食事になるのです。
もちろんそのために値段設定もひそかにそういう風にしていたのですが、やっとオーダー頂きました。
やりたいんなら自分からすすめればいいとお思いでしょうが、なぜかうちの店は基本的にこちらからはあまり話しかけない風潮になっておりまして(みんな話し下手なもので、、、もちろん質問には何でも答えます!)ただ待つのみなのでした。

さて、おばあちゃんお一人のお食事で思い出しましたが、僕がここ数年通っているご夫婦2人でやっておられる西荻窪のフレンチのお店でも常連のおばあちゃんがお一人で前菜とグラスワインとパンでお食事してるのをよくお見かけしました。
それと1年前くらいに行った友人の働く赤坂のイタリアンにもそんなおばあちゃんがいらっしゃいました。
僕はそんなお年寄りの方を見るたびなんてイキで洒落ているのだろうと思わずにはおれません。
あわよくば自分もそんな風にカウンターでちょっと食事がてらワインでも、なんつってやってみたいのですが
まだまだそこまでは達していません。早くそんなシチュエーションに耐えうる人間に成りたいものですがまだまだのようです。

2007年05月07日

シンプルなカオス

あまり旅行に行く暇も無いのですが今年の夏はいつも野菜を送って頂いているお礼も兼ねて、
父親の故郷である山形に行ってきました。
オリエントスパゲッティでは東京に自家菜園を持っていますが東京のそれとは規模が違います。
オリエントの菜園はハーブや葉物はどうにか出来ますが、山形のは菜園じゃなくてもう立派な畑です。
それは生活の中の一部なのです。

何軒かある親戚の家には当然のように自分達で食べる分を賄えるほどの畑があり、食卓にはそこら辺の河原や道端で取れる山菜やら裏の畑で取ってきた野菜がズラリと並びます。
例えば今年はじゃが芋、トマト、茄子、南瓜、冬瓜、オクラ、胡瓜、玉ねぎ、長ネギなど、、、。
その野菜の旨い事と言ったらありません!
じゃが芋はくし切りにして素揚げし旨みをギュッと詰まらせて塩をかけて頂きます。
新しい品種のキタアカリというじゃが芋なんですが、ねっとりとしたその旨さは格別でした。
茄子、南瓜は天ぷらに、冬瓜は出汁で煮付けてその滑らかな触感を楽しみます。
トマトに顔を近づければ濃厚な青臭い昔のトマトの香りが、、、。
キンキンに冷やして齧ればその香りのままの甘酸っぱいジュースが口の中に弾けます!
オクラはオクラで図体も立派でピシッとした輪郭を持ち、煮付けても生で齧ってもその存在をアピールするわけです。
山菜は取った時に塩漬けにして保存しておき、食べる時に一日かけて塩抜きをします。
そのままお浸しにしてもいいし、薄めの出汁でコンニャク、油揚げなんかと一緒に炊いてみたっていいのです。
これがまた旨い!
山形のシンプルな山菜料理は昔から送ってもらい僕の家の食卓にも並んでいたのですが、
コリッとした触感と軽い粘りのあるその旨さは滋味溢れる大地の恵みを感じます。
胡瓜はもちろん生で齧っても良し、自家製の味噌や梅干なんかを使ったソースを付けてボリボリやっても良し。
冷えた焼酎なんか煽りながら、そんなシンプルな料理を食べていると東京に住んでいる事すらバカバカしくなってきます。
(そんな事言いながらも帰りの高速で東京の街並みを見た時にホッとしてしまったりするんですが、、、)
お米ももちろん旨くて今回は古代米といろいろな雑穀を合わせて炊いてもらったのですが言うまでも無くすこぶる旨かったのです。

イタリアの野菜はとてつもなく旨いのでシンプルな料理法しかないと言われますが全くその通りです。
ちょっとしたイタリアンレストランに行けばどのお店も日本で入手出来る最高の野菜を扱っています。
なぜなら単純にイタリアの野菜はそれだけで充分旨いので、
それを優秀なシェフの方が自分の料理をお客さんへ100%の状態で表現したいと思えばそうなっていくのは当然の成り行きなのです。
(もちろんその分お値段は張るわけですが今の日本の現状を考えれば仕方の無い事です。農薬を使わずに手間暇かけた野菜は高いのが当たり前で、その代金をどこまで払える人がいるのかにかかっていると思います。これは攻められて死んでも良いから軍隊を解散し、戦争をこれからの未来から無くしていこう!と同じくらいなかなか前に進まないレベルの話だと僕は思います。体質改善と同じ手法で、それぞれの意識の改革しかないのでしょう。でも多くの人がそのような意識を持てば相場と言うものは下がってくるのもこの世界のシステムなので、簡単なところだと消費者側の不買運動くらいしかないのではないでしょうか?オリエントスパゲッティではどうにかお店の分くらいは出来る限り自分らで作って値段的には折り合うように頑張っていきます!)

ちょっと話がそれましたがそんな野菜をダンボールに詰めてお店に送ってもらいました。
お店の入り口にその日ある直送野菜が書いてあるのをご存知でしょうか?。
例えば今(8/17現在)でしたら茄子、トマト、オクラ、じゃが芋、南瓜、胡瓜、バジル、ミントが東京と山形の畑で、もいできた野菜です。
それらは例えば<夏野菜の和風冷製スパ><ヴィシソワーズ><サラダ各種><チョコミントのジェラート>なんかに使われています。
やはり野菜は夏がメインです!

秋に入ると勢いも薄れてきますのでお早めにどうぞ!


2007年05月07日

キャベサラ



映画「未知との遭遇」でリチャード・ドレイファス演じるロイ・ニアリーが、取り憑かれるように作った泥の山ほどではありませんが、なんとなくキャベツの山を作ってみました。
このキャベツはオリエントスパゲッティ20年にも渡る「ランチサラダ」として使われます。
これで2玉分。毎日切っては出しての繰り返しです。
10数年前にオリエントスパゲッティで働きたいと思って友達にそのことを話したとき「あぁ、あのキャベツの店ね」と言われるほど、ランチのお客様にはおなじみの「キャベサラ」。
キャベツをふんわり盛ってオカカとノリを少々、醤油ベースの和風ドレッシングでお出しします。
よくお客様に「おかかがいい味だしてるね」と言われますが、おかかは「旨味をプラスする役目」ともうひとつ「ドレッシングを止める役目」があるのです。
おかかがないとドレッシングはすぅっとキャベツの網目をくぐり抜けてお皿の底に溜まってしまいます。
世の中、まとわりつかないドレッシングほど寂しいものはありません。
そこでおかかを使ってドレッシングを止めるのです。

ここまでキャベツを千切るのに早い人で10分くらい。
季節によっても変わります。
詰まったキャベツは切りやすいし量も多く取れ、逆に春キャベツのような柔らかくてパフパフのキャベツはうまいこと切れません。
そんな時は違うサラダにしたりキャベツを温野菜にしたりしてお出ししています。
もちろん旬の春キャベツを切りにくいからと言って放ってはおきません。
春のキャベツは甘みがあってとても美味しいから、ボイルしたものをパスタや前菜にちゃんと使います。
野菜は旬の物が一番美味しくて栄養もあるから使わない手はありません。

そんなキャベツはもともと地中海沿岸に原生しているケール(青汁の原料)が、有史以前からギリシア、ローマなどで栽培され、ヨーロッパ各国で改良されて現在のキャベツ類(ブロッコリー、 カリフラワー、芽キャベツなど)に発達していったと言われています。
日本には18世紀頃に伝えられましたが、その当時は食べるためではなく、もっぱら観賞用だったそうです。
それに胃や肝臓にも良くて最近では免疫力を高める力は医薬品並みとまで言われてるのですから、なんとも頼もしい限りです。
オリエントのスタッフで風邪をひく人があまりいないのも、もしかしたら毎日「キャベサラ」を食べているせいかもしれません。
しかし胃と肝臓に関してはそれを上回るほどお酒を飲んでしまうので、あまり利かないのが現状です。
このキャベツの山の中で暮らして、ちょうど良いくらいなのでしょう。
残念!

2006年08月21日

オリエント風ナポリタンが出来るまで 

スパゲッティナポリタンという新しい食べ物が日本人に受け入れ始めたのは、1970年代辺りだと言われています。当時、喫茶店での軽食として発明されたそれは、ミートソースと共にそれまでスパゲッティなんて物を知らなかった人々を魅了しました。もちろん当時新種のこの食べ物はイタリアのナポリに行っても存在しません。その頃まだ珍しかった日本のイタリアンレストラン(伝説の<キャンティ>は1960年頃にオープン)で食べた人とか、当時まだなかなか行けないイタリアでパスタ料理に感動した人、あるいは最新の情報をキャッチしていた人らがナンチャッテスパゲッティを発明したのです。

さてそういう時代に生まれるべくして生まれた和製スパは、日本人の得意とする改良を経て根付いたトンカツやラーメンと同じく、まだ貧しかった時代の先輩方の工夫の成果でもあったのです。僕の父なんかは未だにスパゲッティと言えばミートかナポリタンです。これはナポリタン好きの方が良く言われることですが「あのケチャップでドロドロの感じがたまらないんだよねぇ」なんて話をよく聞きます。トマトソースと言うものすらまだ馴染みのなかった時代に見よう見まねで赤くしてみた、哀愁漂うナポリタン。僕も昔、お金がない時なんかに家で作ったものです。適当な野菜を入れてケチャップを入れればなんとなく食べられてしまう、どう失敗してもケチャップの味なので大きく外しはしないお手軽な感じも、広く家庭にまで浸透した理由だったのでしょう。

しかしこんな王道なナポリタンがオリエントには無かったのです。まれに「ナポリタンないのか?」というお客さまにはケチャップと海老の殻で取ったアメリケ-ヌソースとトマトソースをミックスさせてたものをソースとして、ナポリタンを作っていました。家で適当に食べるならまだしもお店で<ただケチャップをまぶしたもの>はちょっとな、と思ったのと、実は僕自身ナポリタンのケチャップまみれのそれは好きではないのです。どう食べても味はケチャップの甘ったるい味だけで最後には飽きてしまうし、あまりにも芸がないからです。よく老舗の洋食屋とか喫茶店の特集でナポリタンが紹介されてますが、今だホントにケチャップのみで作っている店があるのには驚きました。でもそれでお金を払ってくれるお客さんがいるのも事実なので、好みの問題だとは思うのですが、、、。そこでお客様からの要望もあることだし、自分で美味いと納得できるオリエント独自のナポリタンを作ってみようと思い立ったのです。まずはグランドメニューに入れる前におすすめメニューで様子見です。ナポリソースの基本は(何が基本なのかわからないのですが、とりあえずケチャップだけではないレシピをいろいろ探った結果)マリナラソース(アサリエキスや白ワインの風味が特徴の海の香りがするトマトソース)が母体となるのですが、たまたま業者にそのソースがあったのでそれを使いました。そして海老の殻で作った常備してあるアメリケーヌソースとケチャップをミックスさせてナポリソースを作ったのです。これでトマトソースを使うよりは一段とグレードアップしました。これに辛味を付けて海老とフランクと野菜で<夏のナポリタン>として2001年夏にオススメメニューとして売り出したのですが、これがまた結構好評で世の中にこんなにナポリ好きの方がいたのかと驚くほどでした。さて次はこんなに食べて頂けるならとオススメからグランドメニューへの昇格です。

ここでいろいろ考えましてグランドメニューにするならマリナラソースをイカを仕込む時に余ってしまうエンペラやゲソを使って作ることは出来ないかと考えました。そこで試行錯誤を重ね最終的には、ミンチにしたエンペラとゲソをクールブイヨン(アサリと野菜のブイヨン)と白ワインで煮て柔らかくした後、トマトソースとアメリケーヌソースとミックスし、さらにエピス(甲殻類などに合うスパイス。オリエントでは12種類のスパイスを配合)で風味付けしてナポリソースとしました。オーダーが入れば小海老とフランクと野菜をソテーしバターでコクを出しナポリソースを入れてパスタと和えれば完成です。しかし難点が一つだけあります。それはイカと海老の仕込みの前にナポリソースが無くなってしまうとオーダーストップとなってしまうことです。以前はちょうナポリソースが無くなる頃に海老とイカの仕込が来てうまく回っていたのですが、最近売り切れることが多くなってしまいました。というわけで品切れの場合はごめんなさい、、、。そんな時は次の仕込みはいつかと聞いてくだされば即回答いたしますので、気兼ねなくスタッフまで声をかけてくださいませ。それでは今後もさらなるナポリライフを!

2006年08月13日